ウィルス検定を実施し、クリーンな苗木の供給に努めています。
秋にブドウ畑を周ると紅葉している樹をみかけることがあります。美しくはありますが、これは樹に傷がついたり、虫に侵されたり、ウィルスに罹患することで発生する場合がほとんどです。傷は癒えますし、虫には殺虫剤がありますが、ウィルスに罹患したものは引き抜くしかありません。
購入して1、2年しか経っていない苗木がリーフ・ロールに罹患していたとの話はよく聞きます。苗木屋が使用する台木、もしくは穂木がウィルスに罹患していたと考えられます。カイガラムシなどの昆虫がウィルスを媒介するので、一部のブドウ樹が罹患すると汚染は畑全体に広がる恐れもあります。罹患した苗は引き抜かねばなりません。一度汚染された畑をクリーンにするためには、新しい畑を始めること以上の手間とコストがかかります。
ラグフェイズは、接木前の台木と穂木の母樹に対して、日本で被害が深刻な次の5種のウィルスについて、山梨大学と山形大学で全株のPCR検定を1〜3年で行ない、合格したクリーンな苗木を提供しております。
- リーフ・ロール1
- リーフ・ロール2
- リーフ・ロール3
- GVA
- GVB
PCR検定の費用は高く、対象となる母樹は膨大なため、効率的であるとともに信頼度の高いリスクベースの検定を確立することが不可欠です。
使用する台木については、毎年、自社分および委託分の全株をウイルス検定の対象にしています。また、ラグフェイズの旗艦畑の穂木は、前年度陽性株が見つかったものについては全株チェックを行います。その他についてはサンプルチェックとなりますが、3年間で全苗木をカバーできるようスケジュールを立てて検定を行っています。旗艦畑以外から入手する穂木については、全株検定を行っております。
複数本まとめて検定を行い、陽性となった場合についてはその株を特定するために再検定することでコストの低減を図っています。リスクの高い畑については、仮想の格子を割り当てて一度に問題株を特定できるような仕組みも導入済です。前年度までのリスク評価に基づいてサンプリング手法も変えます。陽性株が発見された場合には、抜根して被害の拡散の防止に努めております。
ウィルスを除去する唯一の方法として、成長点培養があります。細胞分裂の活発な穂先約0.2mmにはまだウィルスが侵入していない特性を用いたもので、この穂先を切断して培養することでクリーンな株をつくることができます。FPSは成長点培養を推進しており、それが行われた株についてはクローン名の後に「.1」を付与することで区別しています。また、ラグフェイズは、山梨大学との共同研究において成長点培養を行なっており、作られた株には「.j1」を付与しています。
このほか、接木前の温湯処理、苗木畑の連作障害対策、計画的な防除を行ない、クリーンな苗木生産に努めています。