シラーはフランスのローヌ地方で生まれた黒ブドウ品種です。歴史は比較的新しく、フランスでも栽培が盛んになったのは1970年ごろからです。現在フランスのカタログに掲載されているクローンは10種類以下で、2000年以前に選抜されて使われ続けているのは470、471、524、747の4種です。
一方、シラーはオーストラリアに渡りシラーズとして人気を得ていますが、1952年のグランジ・エルミタージュが存在するなど独自の進化を遂げているとも言えます。オーストラリアで選抜されたクローンも各種存在します。当社が保有している1654もそのひとつです。各ワイナリーで独自に選抜されたクローンもあり、代表的なクローンが確立されるには至っていません。
シラーの特徴として、白胡椒の香りがあります。これはロタンドンという芳香物質によるものです。
2015年にアメリカブドウ学会誌に掲載された、メルシャンと山梨大学などの研究結果によると、長野県上田市のシラーに含まれるロタンドンの量は、オーストラリヤやコート・ロティのものよりも多いことが示されています。
https://www.ajevonline.org/content/66/3/398
この結果は、土壌の水分量などによるとの考察がなされていますが、決定的な要因は見つかっていません。しかし、何らかの日本のテロワールがロタンドンの生成に寄与していることは否定できません。
この研究をきっかけに日本のシラーが見直されることとなりました。メルシャンのシラーは、市場に出た途端に完売となる状況が続いているとのことです。
ラグフェイズでは、以下のクローンを提供しています。
Syrah 383:かつてフランスで多用されていたクローンですが、今はENVAV INRAのリストからも外されています。アメリカのワシントン州では、Cool Climate Syrahとして冷涼な気候で真価を発揮すると言われています。
Syrah 470:樹勢が強く、円錐型をした中程度の大きさの房です。シラーの典型的なクローンと言われています。アロマティックで凝縮感があり、タンニンが豊かです。一般的に病害耐性がありますが、灰カビ病には感染しやすいクローンです。木の成長にしたがって収量が下がる傾向にあり、ENTAV INRAでは懸念を抱えています。
Syrah FPS07:カリフォルニアでローヌレンジャーと呼ばれるシラーの造り手たちが推すクローンです。樹勢は弱く収量は多めです。フランスの877クローンと報告されています。しかし現在では、フランスの877もFPS07もクローンリストからも外されています。
Syrah Stonecroft:Dry RiverのAraapoff Vineyardで選抜された枝がRiversunに栽植されました。ニュージーランドに渡った起源は不明です。房が小さく収量が少ないクローンです。Dry Riverのシラーの主要クローンです。
Shiraz 1654:Harry Tullochが、1944年に南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーでManurialトライアルの際に選抜した優良クローンです。収量は低〜中程度、比較的バラ房になりやすくワインの味わいはリッチでフルボディになります。チョコレートやフルーツケーキのアロマを有し、タンニンは柔らかくなります。南オートラリア州で最も広く植えられているクローンです。
Shiraz 4012:オーストラリアのCharmers Nurseryから輸入したクローンです。詳細なデータは残っていません。樹勢は強く、収量も多めです。