近年、育種だけでなく、既存品種の遺伝的多様性を探る取り組みも行われています。ポルトガルではワイナリーが共同で「ポルヴィッド(PORVID)」という調査を進め、ヴィティス・ヴィニフェラの遺伝的多様性を研究しています。ポルトガルは近代化が遅れたことで、結果的に多くの土着品種が守られ、多様性が残されました。1970〜80年代以降、クローン選抜による植樹が主流となったため、古い畑の保存が重要になっています。
他地域でも、気候変動に対応するため、かつての品種を復活させる動きがあります。フランス南西部の協同組合プレモンは、忘れられていた「マンサン・ノワール」を再発見しました。このブドウはアルコール度数が低く、温暖な年でもフレッシュさを保ちます。プレモンは10年の研究を経て2010年から再植栽を始め、現在は30haを栽培し、最終的に80haまで増やす計画です。
マンサン・ノワールはかつてアルコール度が低すぎるとして敬遠されましたが、温暖化が進む現代ではその特性が有利とされています。プレモンでは、メルロとマンサン・ノワールをブレンドした「ムーンサン」を造り、気候に合った新しいスタイルのワインを目指しています。
また、ローヌ地方ではギリシャやイタリアの暑さや乾燥に強い品種を導入する試みも進められています。
(写真は、ラグフェイズの畑で育つプティ・マンサン。近縁ではない)
詳細は、『新ブドウ栽培学』第11章に記載されています。













