栽培化の拡大

新石器時代(約8000年前)、食料の調達方法が採集から作物栽培となり、人々が定住するようになったことで、コーカサスは栽培化の中心地となりました。大麦やひよこ豆などとともに、ワイン用のブドウ樹も栽培され始めました。

コーカサスでは陶器の発明が役立ち、粘土が焼かれてワインの保存として使われていたことがわかりました。ブドウ果汁の残留物(ワイン醸造の痕跡)が南コーカサスの陶器サンプルから発見されたのです。アルメニアのアレニ洞窟には、紀元前4000年に遡ったワイナリーの最古の遺跡があり、ブドウを踏むための漆喰の床や、地下の瓶に入れられた果汁が残っていました。最近の研究では、ヴィニフェラの栽培化は、南コーカサスと肥沃な三日月地帯(アナトリア南東部、レバノン北部、シリア)から地中海世界を経て西に伝わり、海岸沿いにイランと中東に広がったことが示唆されました。

しかし、2023年3月に有力誌サイエンスに掲載されたヤン・ドンらの論文により、ブドウ栽培の中心地は南コーカサスだけではなかったことがわかりました。約1000km離れた近東(レバント、現在のイスラエル、パレスチナ、レバノン、ヨルダン)でも、同じ頃に栽培化が行われていたのです。

栽培ブドウ樹が人間の集団とともにレバントから西に進み、ヨーロッパでの一連の遺伝子移入(野生ブドウとの偶発的な交配)を通じて、今日広く栽培されているヴィティス・ヴィニフェラ品種を生み出しました。ワインは、このブドウの系統に由来しているようです。ブドウがヨーロッパに伝わったときに地元の野生ブドウと交配し、小さくて甘さが控えめで皮の厚い、食べるにはあまり適さないブドウとなりましたが、ワインを造るには最適でした。また、コーカサスで栽培されたブドウ樹は、現在ジョージアとアルメニアで栽培されている品種を生み出しました。この2つの地域のワイン用ブドウは、起源はまったく異なるものの、栽培化に際して品種の選抜を迫られた際に、共通の特徴を有したものになったのです。

写真は、ジョージアの土着品種サペラヴィで作られたワインラベルより。

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