仕立て方と苗木価格

レミントン・ノーマンのGrand Cruには、La Tâcheの収穫風景が掲載されています。垣根越しにスタッフ同士が会話を交わしたり、腰を屈めて収穫をしている様子がわかります。樹の高さは120cm、フルーツゾーンは地面から50cm程の高さです。この高さだと特殊なトラクターに跨いで作業をすることが可能です。また、地中から汲み上げた水分が果実に到達するまでの距離が短いため、エキス分が凝縮されやすいと信じられています。

山梨県など日本の産地では、垣根栽培が採用されています。棚面は180cmのところに設定され、フルーツゾーンも同じ棚面の主幹に位置しています。この方式だと風通しが良くなり、病害リスクも減少するため、雨が多く多湿な日本では理にかなっていると思われます。日光も漏れなく葉面に降り注ぐこととなり、エネルギー効率は高くなります。

フランスの作り方に合わせると、苗木の穂先の長さは関係なく、発芽すれば栽培者が自由に芽を選択し育成します。育苗時には、副梢を取り除く必要もなく、育った樹にバリカンを入れて高さを調節するだけで苗木が仕上がります。

米国産の穂先は2-3cm程度

一方、日本の棚仕立てに合わせると、生産者はなるべく長い樹を育てたいので、太い一本の主幹のあるものに仕立てなくてはいけません。添木を立てて、主幹を一本化するこまめな手入れが必要となります。生食用のブドウの苗木は基本この方式を前提として栽培されるため手間がかかり、一本あたりの価格も4000-6000円と高額になってしまいます。

日本の苗木の穂先は15cm程度

ワイン用ブドウの苗木の栽培は、フランスのような形で栽培するのか、棚を前提とした一本化をするのかで悩ましいところです。海外の苗木コストは300-1200円と安価に設定されていますが、一本化を前提としていないので、苗木の品質は日本のものと比べると見劣りします。近年、海外との価格差のみに注目し新興栽培者からは厳しいご意見を頂きますが、山梨県などの老舗生産者は苗木の質をこれまで通り維持することを求めています。最近は原料価格の高騰、円安により価格差は縮小していますが、苗木業者も厳しい状況にあります。

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