グリホサートは、ホスホン酸を含む小さなアミノ酸分子で、安価で効果が高く、世界で最も広く使われている除草剤です。「ラウンドアップ」という商品名で知られ、年間約8億kgが使用されています。主に農業で利用されますが、鉄道や運動場などでも使われ、特にブドウ栽培では世界全体の7%が使用されています。
もともとグリホサートは1964年に工業用パイプのスケール除去剤として開発されましたが、1970年にモンサント社が除草効果を発見し、1974年に除草剤として登録しました。植物のアミノ酸合成に関わる「シキミ酸経路」を阻害する仕組みで、人間にはその経路がないため安全とされてきました。
1996年には、グリホサートに耐性を持つ遺伝子組み換え作物「ラウンドアップ・レディ」が登場し、大豆やトウモロコシなどで広く使われるようになりました。そのため、一年中グリホサートを散布することが可能になり、栽培期間中ずっと雑草を除去することができました。現在アメリカで栽培されている大豆、トウモロコシ、綿花の90%がグリホサート耐性を持つように遺伝子組み換えされています。
しかし2015年、WHOの国際がん研究機関が「発がん性の恐れがある」と分類し、安全性への懸念が高まりました。米国では発がんとの関連をめぐる裁判も起き、フランスでは一時的に禁止の動きもありました。さらに、市販製剤には界面活性剤などの添加物も含まれ、これらが動物に有害である可能性も指摘されています。
(写真は、ラグフェイズの苗木畑。雑草との競合が激しい幼木は、グリホサートの使用が欠かせません。)
詳細は、『新ブドウ栽培学』第17章に記載されています。