ピノノワールを造る多くのワイン生産者は、ブルゴーニュのグラン・クリュのようなワインを造ることを目指しているようです。当社の苗木は、約半数がピノノワールです。ご提供にあたり、ピノノワールが造られている歴史や環境の理解が重要と思い、テロワールについて考察しました。
ブルゴーニュでは数千年前からピノノワールが造られ、土壌や地形、微気候などをもとに畑の格付けなどが評価されてきました。この経験等をもとにテロワールという概念が確立され、1936-37年にかけて制定されたAOC法(原産地呼称)に反映されました。この概念はブルゴーニュに限定されたものではありませんが、2000年にもわたってワイン造りに携わってきた人々がワインとそれが造られた土地をはっきり結びつけて考えたのはブルゴーニュが最初でした。
ブルゴーニュでのテロワールは、表土、土地の向き、下層土、局地的気候条件などによって決まる概念で、ワインを通して感じることができるとされています。以下のような言葉でも言い表されています。
「テロワールとはブドウの言葉を翻訳する過程で生まれた言葉」
「たとえば多かれ少なかれ強い信号を放つ固有の周波数」(マット・クレイマー)
「楽器としてのテロワールは、演奏方法を知らなければ役に立たない」
「土中の『ごつごつのダイアモンド』で、人に掘り当てられて、美しく造り上げられる準備が整っている」
「偉大なテロワールは、自然界において欠乏したものや不均衡を、よりエレガントなものに変身させる潜在能力があり、その生まれた場所を彷彿させる味わいがある」
レミントン・ノーマンは『ブルゴーニュのグラン・クリュ』において以上の比喩を引用し、これらすべては本質的な当を得ているとしています。ワインを人間と使用原材料のジョイントベンチャーととらえ、ワインの質を決定づける本質とは生まれる土地に固有であり、生産者はワインを産むために重要な助産婦と位置づけています。
この考え方に基づくと、テロワールを表現したワイン造りを目指すのであれば、土壌、地形、気候を十分に理解して、そこにふさわしい台木・品種・クローンを選んでいくというプロセスが重要と考えます。