ブドウ樹は、栽培作物の中でも特にウイルス感染が多く、2020年までに86種類のウイルスが確認されています。これらのウイルスはフィロキセラ禍よりも前から存在しており、葉が季節後半に赤くなる症状は、かつては「生理的障害」と考えられていました。
現在、最も問題とされるのは グレープ・リーフロール・ウイルス3(GLRaV-3) です。リーフロール・ウイルスは少なくとも10種類知られており、感染しても症状が明確に出ない場合があるため、畑から完全に排除することは容易ではありません。感染したブドウ樹は、芽吹きが遅れ、夏の終わりに葉が赤変・黄変し、葉が巻く症状が起こります。特に赤ワイン用品種で葉脈が緑のまま葉全体が赤くなるのが特徴です。
ウイルスは、主にコナカイガラムシを媒介して広がります。放置すると感染は指数関数的に拡大します。感染したブドウ樹は、収量が20〜40%減少し、成熟が遅れ、アントシアニンが減少し、酸度が高くなるため、ワイン品質に悪影響をもたらします。
対策としては、ウイルスフリー苗木を植える、感染した樹を早期に除去する(ロギング)、媒介虫(コナカイガラムシ)の徹底防除、植え付け前や既存樹に対してウイルス検査を行う、などがあります。南アフリカでは、ヘメル=アン=アールデ地域の生産者がこの問題に先進的に取り組んできました。クリエイションやヴェルゲレーゲンでは、ウイルスフリー苗木の使用、感染樹の除去、2年間の休耕、媒介虫の管理を徹底し、感染率を大幅に低減することに成功しています。ある畑では、2002年にほぼ全樹が感染していたものが、10年後には感染樹がほぼゼロにまで減少しました。
写真は、山梨大学との共同研究で成長点培養をしたウイルスフリー苗(シャルドネB95.j1、UCD15.j1、SO4.j1、161-49.j1)。
詳細は、『新ブドウ栽培学』第15章に記載されています。













