台木の解説

リパリア・グロワールの萌芽

リパリアは、米国の寒冷なハドソン川流域からアパラチア山脈西側にかけての広い領域に繁殖しています。萌芽からの生育期間が早く、耐寒性を備えています。このリパリアから選抜されたリパリア・グロワール(RG)は、フィロキセラ対策として初めに用いられた台木です。モンペリエ大学で接木が試みられたため、モンペリエとも呼ばれています。

萌芽のタイミングを早めると、生育期間を前倒しにできるので、ヴェレゾンや収穫も早まります。近年、春先の突然の寒波で芽がダメージを受ける霜害の被害が広がっていますが、リパリアは霜害リスクが高い台木です。一方、夜温が下がらない酷暑は着色不良につながると言われますが、ヴェレゾンを早めることで酷暑時の着色不良を回避するメリットにもなり、生育期間の前倒しは一長一短あります。

ルペストリスは、フロリダ州に繁殖しています。暑く水分の少ない環境のため耐乾性に優れています。

ベルランディエリは、テキサス州からメキシコにかけての石灰岩土壌の砂漠地に繁殖しています。石灰岩耐性と耐乾性を具備しています。台木に当初用いられていたリパリア、ルペストリスには石灰岩耐性が少なく、ブルゴーニュ等の北西ヨーロッパの石灰岩土壌における繁殖に問題がありました。一足遅れてアメリカ大陸の石灰岩土壌に生息するブドウに石灰岩耐性があることがわかり、台木の生成に使用されはじめました。

アセリフォリア(別名ロンギィ)は、テキサス州北部に生息するヴィティスで、RGの次に耐寒性に優れています。かつては、ソロニスと呼ばれて接木に使うことを考えられていました。

モンティコラは、テキサス州南部に生息するヴィティスで、耐乾性に優れています。台木の作出に用いられることは多くありませんでした。

これらのアメリカ原生のブドウ木を用いて、様々な台木が作出されました。親が同じであれば、特性が似ているものも多いので、両親が同じものを一括りにして解説しています。

リパリア×ルペストリス

3306、3309、101-14、シュワルツマン

この組み合わせは、石灰岩土壌の少ない土地で多く使われています。ブルゴーニュでも新生代の畑で用いられています。日本で石灰岩土壌は少ないため、ベルランディエリの特性でもある、石灰耐性は必要ではありません。

一般に海外の苗木屋の台木の解説によると、3306及び3309のネマトード(線虫)耐性は低いと書かれていますが、当社の圃場で確認する限り問題は生じていません。

101ー14の台木が重用されるのは、他に比べて根が横に広がる特性を保有しているためです。水が溜まりやすい斜面下部等で多く使われています。その他のこのグループの台木は、根張りが深くなるため、水捌けの良い土壌に適しています。また、寒冷地において根が深く張ることは、凍害の影響が少なくなるメリットでもあります。

シュワルツマンは、実や房が小さくなるためニュージーランドで珍重されいる台木です。

リパリア×ベルランディエリ

5BB、5C、SO4、161-49、420A

ハンガリーの苗木業者、テレキが石灰岩耐性のある台木を作出すべく交配選抜したものに5BB、5Cがあります。5BBは、長らく日本で多用されてきましたが、徒長になりやすいので最近は敬遠されがちです。

5Cは、5BBと似た特性を有しています。特に冷涼でやせた土地の生産者からの引き合いが増えています。

石灰岩土壌の多いブルゴーニュのグランクリュでは、SO4、161ー49が多用されていましたが、最近はさらに改良を加えたグラーヴ・サックなどへ移行する生産者も目立ってきました。日本で育てた経験では、SO4は木が固いのでコウモリ蛾などの侵入を阻む効果があります。

420Aもカリフォルニア等でたまに使われますが、接木時の活着が他に比べて悪く、オーダーメイド限定とする苗木屋が多数です。

ルペストリス×ベルランディエリ

110R、1103P

節間で枝が片側に膨らむ性質があり、海外の大手接木生産者も手作業での芽飛ばしを余儀なくされています。

1103Pは、根張りが良く、カリフォルニアでは引き合いが多くなっています。当社の経験では、メルローを除き活着が悪いので、現在のところ限定的に利用しています。

110Rはフランスで最も多く用いられている台木のひとつです。ボルドー等でカベルネ系の穂木の台木に使われることが多いようです。

リパリア×アセリフォリア

16-16Cは、耐寒性に加えて、湿潤耐性も備わっているので、日本の土壌にも合っています。木が柔らかいので、コウモリ蛾の侵入を許す機会は多いようです。

1202は、ムールヴェードルとルペストリスを掛け合わせて作出されました。色づきが悪いと言われてあまり使われていません。

188₋08は、モンティコラとリパリアを掛け合わせて作出されました。あまり使われませんでした。

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