べと病は、植物の緑色の組織の表面にある小さな気孔を通じて感染します。発芽の際に放出される大胞子嚢が雨のしぶきによって葉に広がり、2本の鞭毛を持つ自動性遊走子が気孔に向かって一次感染を引き起こします。そこでこの鞭毛はなくなり、嚢胞化と呼ばれるプロセスを経て、細胞壁を発達させます。気孔を通る菌糸が形成され、ブドウの細胞から栄養を摂取する吸器と呼ばれる摂食体が発達します。そして、湿気が多いと胞子嚢柄や胞子嚢を生成し、水しぶきや風などによって胞子嚢が広がって二次感染を引き起こします。
感染の最初の兆候は、葉の上面にできる油滴として知られます。葉を裏返すと、裏側に白い胞子嚢柄と胞子嚢が綿状の塊として現れます。この油滴は茶色になり、乾燥し、組織は死に至ります。べと病のリスクを予測し、「3-10散布戦略」と呼ばれるものに従って最初の散布を行います。平均気温が 10℃を超え、24 時間で 10mm を超える雨が降り、新梢の長さが10cmを超える場合の3つの「10」を指します。
この化学的対処法は、アレクシス・ミラルデによって発見されました。1882年10月、ミラルデはボルドーのサン・ジュリアン地区にあるシャトー・ボーカイユのブドウ畑を訪問し、樹が盗まれないよう緑青(石灰に硫酸銅を混ぜた)が塗られている葉を見つけました。これは、同時にカビの発生も防いでいました。ミラルデは、2年をかけてこれに改良を加え、ボルドー混合液として知られるものを作りました。ボルドー混合液の有効成分は銅イオン、Cu2+ で、膜に影響を与えて酵素反応を妨げることにより、真菌、卵菌、細菌からブドウ樹を守ります。しかし、銅は土壌毒性の問題を引き起こす可能性があるため、使用量が制限されています。
ホスホン酸カリウムもべと病の治療に有効であり、有機ブドウ栽培では長い間使用が許可されてきました。これが、ドイツとオーストリアで銅の使用制限が低い理由です。しかし、ホスホネートはEUの有機ワイン栽培においては認められないとの宣言が下されています。
アメリカ、中国、中央アジアの在来のブドウ樹では、27 の異なるべと病耐性遺伝子Rpv (Plasmopora viticola に対する耐性) 1-27 が特定されています。一部のヴィニフェラ種は、他の品種よりもべと病に対して耐性があります。より耐性の強い品種は、強力な防御反応を繰り返す仕組みがあります。うどんこ病と同様に品種改良プログラムが継続しており、その結果、ヴィニフェラのブドウ栽培上の特徴だけでなく、アメリカ原産のブドウやアジアのブドウの耐性遺伝子の一部を備えた数多くの新品種も誕生しています。