品種改良における病害耐性の見分け方

フィロキセラ対策として、アメリカ産のブドウ樹とVitis Viniferaの交配が試みられました。品種改良されたブドウ樹は、フィロキセラ耐性があり接木の必要がなくなったものの、Viniferaの特性は50%しか含まれておらず、市場で受け入れられる味わいのものはできませんでした。

近年はカリフォルニア大学デイヴィス校のアンディ・ウォーカーなどが、繰り返しViniferaを交配することで味わいを高められることを提唱し注目されています。これは、アメリカのブドウ樹とVitis Viniferaを交配してできたブドウ樹にさらにViniferaを繰り返し交配させることで、Viniferaの遺伝的特性を50%、75%、87.5%、93.75%、・・・と高めたものを作出することが可能であることを利用したもので、すでに以下のブドウが商品化されています。パテントが有効で、米国は輸出を認めていません。

AMBULO BLANC:97% Vitis Vinifera(62.5%カベルネ、12.5%カリニャン、12.5%シャルドネ)、1.5% Vitis Arizonica、1.5% Vitis Rupestris

CAMINANTE BLANC:97% Vitis Vinifera(62.5%カベルネ、12.5%カリニャン、12.5%シャルドネ)、1.5% Vitis Arizonica、1.5% Vitis Rupestris

CAMMINARE NOIR:94% Vitis Vinifera(50%プティシラー、25%カベルネ)、3% Vitis Arizonica、3% Vitis Rupestris

ERRANTE NOIR:97% Vitis Vinifera(50%シルヴァネール、12.5%カベルネ、12.5%カリニャン、12.5%シャルドネ)、1.5% Vitis Arizonica、1.5% Vitis Rupestris

PASEANTE NOIR:97% Vitis Vinifera(50%ジンファンデル、25%プティシラー、12.5%カベルネ)、1.5% Vitis Arizonica、1.5% Vitis Rupestris

これらを交配する上でネックとなるのが、交配の各ステップで耐病性が保持されているかどうかを確認する手間です。かつては、培養したフィロキセラや線虫の生息する土壌で、交配した種子それぞれについて数年間のテスト栽培を行い、耐性のある樹を選抜する必要がありました。

近年、米国中南東部に生息するMuscadiniaが多くのブドウの病害耐性を保持していることから、その遺伝子を解析し耐性を与える塩基配列が特定されました。この遺伝子情報をもとに品種改良が行われた種子から発芽した組織を解析することで耐性の有無を判別できるようになりました。

同様の遺伝子解析から、うどん粉病やベト病、ピアス病などの耐性遺伝子も特定され品種改良に役立てられています。

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